6/37 『リア王』

必要を言うな !  如何に賤しい乞食でも、その取るに足らぬ持物の中に、何か余計な物を持っている。


俺が泣くとでも思っているな、馬鹿な、泣くものか、泣きたい訳はいくらでもある、(雷鳴が近づいてくる)が、この心を粉々に打ち砕いてしまうまでは決して泣きはせぬぞ。
ああ、俺は気が狂いそうだ!(外へ飛び出していく、道化、ケント、グロスターが後を追う)


至らなさ故に何かを欠いていることよりも至らなさにも関わらずなおも不必要なものを持っていることの、その愚かさ。