親子

ジョン・アップダイクの『同じ一つのドア (新潮文庫 ア 3-2)』って短編集が、最初読んだ中学生だか高校生だかの頃はうへー詰まんないなあとか思って途中でやめちゃったんだけどあるとき読み返したらとてもよくて好きで、でその息子も物書きだと最近ブックオフで知りました。

カプチーノを二つ

カプチーノを二つ

「なぜかはわからないが、かつて父がぼくに語り、父のそのまた父が父に語ったという、伝えるに足る唯一のアドバイスを、ぼくは思い出す。トーストは常に中心からバターを塗るべし。真ん中にいれば、何が起きようとも、どこかへ行ける。ぼくはそれを、父に言う。彼は空を見上げて笑い出し、その隙を突くようにぼくの放ったシュートがコーナーをかすめるようにして、梨の木に突き刺さっていく。」


翻訳しか知らないけど、カーヴァーの持つ文体のフラットさとか視線の温度とかに近い、時に冷めてすら感じるほどのデリカシーと愛情で秋みたいな文章。

どうでもいいけどこれ帯に平然と「90年代のサリンジャー!」って あー。新しい時代の新しげな感性はとりあえずサリンジャーって言っとけ!って感じがどうこうって訳じゃないけどアップダイクの息子は90年代のサリンジャーだったのか。そうか。ちなみに『同じ一つのドア』ってもう絶版になってるらしいけどブックオフじゃ親子そろって105円だったよ。